srt2CSV
今の私は生活のために、つまり職業としてプログラミングをする事はない。個人的にはプログラミングにそこまで思い入れがあった訳ではないので別にそれでも良いと思っているし、むしろ今している仕事の方が個人的にはあっていると思う。もっと言うと今の仕事は私にとって天職だろうと思う事もよくある。自分で言うのも何だが、この辺私は非常に恵まれていると思う。
それでも一応情報工学科を卒業したし、プログラミングが全くできないと言う自覚も無い。自分のやりたい事があって、簡単に実装できそうだと判断した場合は、自分でコードを書き始めてしまう。大体の場合は思った通りに動くところまで持って行って満足しながらそのスクリプト、またはサービスを使う。
今回も、そんな感じだった。最初は友人に「TED というのがあるんだけれど、そこの翻訳やってみない?」と誘われたのが始まりだった。最初に翻訳者が字幕の翻訳を行い、その翻訳作業後にアサインされたレビューアーが翻訳者とコンタクトを取って必要な翻訳の修正を行い、最終的に公開されるという形になる。いくつかの翻訳を終えたあたりで以下の様なやり取りをするのが煩わしく思えてきた :
以下の行を
3 0:00:05 0:00:07 this was a world unseen. それが目にされることのない世界だと気づき
以下の様に修正するというのはいかがでしょうか?
3 0:00:05 0:00:07 this was a world unseen. 世界である事に気がつきました
翻訳者とレビューアー間の連絡は大抵メールか Skype のチャットにより行われていた。しかしこういう方法を取ると、以下の様な問題点がある :
– 本来修正されるべき翻訳が (人的なミスで) 抜け落ちてしまう。
– メールから字幕のシステムに入力しようとする場合、タイプミスをしてしまう可能性がある (ちなみに字幕には dotSUB というサービスを使っています)。
– いくつかメールをやり取りした後、最新版の (つまり参照すべき) 翻訳がどれなのか分からなくなってしまう。
– 同じセグメントの翻訳を2回以上やってしまう。
私が最初に考えたのは、この共同作業を Google Docs を使って行うということだった。Google Docs だとエクセルの表の様なドキュメントを扱うことができるし、他のユーザとの共有も行うことができる。問題は字幕が書かれたファイルのフォーマット (.srt) を Google Docs はサポートしていないということ。しかし調べてみると、Google Docs は CSV (エクセル型の表計算データを扱うには、恐らく最も原始的なテキスト形式) ファイルをインポート / エクスポートすることができることを発見する。と言う訳で早速 srt ファイルと CSV ファイル間の変換を行うスクリプトを書いてみることにする。
私の友人は最初はどこまでこの方法が有用なのか最初は分からなかったらしい。翻訳をいくつかこなしていくうちに彼は考えを変えていった。この方法は他の (日本語への翻訳を行っている) 翻訳者へも紹介され、徐々に使われ始めていくことになる。
そのうちプログラミングの経験などが全く無い人からの「動かない」という問い合わせが来る様になる。これはある程度予想されていたことだった。Perl や CPAN といった用語になじみの無い人に「スクリプトはあるので自分で環境を構築して使って下さい」というのはコクかも知れない。構想自体は前からあったのだが、実装の方法を考えてウェブサービスとしてスクリプトの機能を公開してみた (実際にはスクリプトの機能全てを実装している訳ではないのだが..)。これでスクリプトの使用者 (つまり翻訳者) は環境構築などに煩わされることは無くなった (それでも慣れてしまえば自分の環境でスクリプトを動かす方が作業そのものは速いのだけれど..)。
私に TED を紹介した友人はカリフォルニアまで行って TEDActive というところでプレゼンをしてきたらしい。その中で上記のスクリプトやサービスについても宣伝してくれたらしいのだが (感謝!)、その反響はかなり良いものだったらしく、他の翻訳者も「欲しい」と言っていたらしい。
それから少しして他の人が、「どうやってこのサービスを使うのか」という問い合わせをしてきた。以前から考えていたサービスのプロモーションのためにも (そして将来の私の手数を減らすためにも) 映像で使い方を解説した方が良いだろうと考え、週末の時間を利用して動画を作成し YouTube へ投稿した。
How to import content into Google Docs :
How to work on Google Docs
How to import your translation into dotSUB
この動画が完成した段階で、「TED の翻訳プロジェクト本体に連絡して、他の (言語の) 翻訳者にもこのサービスを紹介してもらいたい」と思い、その旨の連絡を行った。返って来た回答は「Facebook の掲示板で紹介してもらいたい」というものだった。
上でも書いたが私はプロのプログラマではない (それどころかエンジニアですらない)。しかしちょっとしたひらめきと少しのプログラミングスキルで (運が良ければ) 他の人たちを幸せにすることはできたと思う。私個人にとっては誇るべきことだ。
